2019年に当協会の会長に就任した早川と申します。当協会は、組織に所属しながら司法書士登録ができる「組織内司法書士」制度をつくることを目標に2013年8月に設立されました。
司法書士制度では、司法書士は独立した存在であり、組織に所属しながら登録することは独立性、受託義務、守秘義務等の観点から、認められていないのが現状です。逆にいえば、これらを満足させられる前提で、「兼業」としてなら登録は認められますが、非常に高いハードルであり、当協会でも登録者は多くありません。
本来、組織に所属しながら司法書士登録を認めることは、本人はもとより、司法書士界や企業にとってもそれぞれにメリットがあることだと思っています。たとえば現状、司法書士会では登録をしていない有資格者の活動実態はまったく把握できていません。これは組織内弁護士を認めている弁護士との大きな違いです。例えば司法書士会では、会社法改正以来力を入れている企業・商事法務分野において、司法書士有資格者の方々がとっくの昔から企業内の最前線で活躍していたにも関わらず、まったくそれが把握できていません。特にコーポレート関連の法務に関しては、弁護士よりむしろ手続法を熟知した司法書士の方が実務的にもニーズがあるにも関わらず、もったいないと感じます。また、例えば、弁護士の場合は、事務所から顧問先の企業へ期間限定の出向という形で所属弁護士を企業で研修させることが多いですが、現行制度では、司法書士でそれはできません。顧問先の企業を実体験できるメリット、企業側としてもそういった弁護士がいてくれるメリットなどさまざまなメリットがある方法ですが、同じことが司法書士ではできない、というのは企業法務に注力していく上で大きなハンデとなると思います。一方企業の側でも、法務部門の人間が、それぞれに他業種や他社の常識を知り、その中から自社に合った最適なリスク管理手法を選択できる真の意味でのプロ集団になるためには、「組織内司法書士」という働き方は企業にとっても意味があると考えています。
政府が副業を推進し、企業もそれを認める方向に時代の変化が起きています。先に述べた受託義務として、「いつでも、常に、受託できる体制」を求め、それを理由に兼業としての登録を拒絶するのは今でも正しい在り方なのか?ということや、そもそも平成14年の報酬自由化によって受託義務は空文化しているのではないか?など、改めて考える時期に来ていると思います。
何より、司法書士になるという選択が、企業等で働く道を閉ざすような制度であって欲しくない、というのが私の考えです。
当協会は、今年で7年目の活動に入ります。会員は100名を超えました。会の中での懇親や勉強会などの活動にも力を入れておりますので、組織内司法書士制度にはそれほど興味がないメンバーもいらっしゃいますが、まずは、組織に所属する有資格者を補足するプラットフォームとなるために、より多くの資格者の登録を目指し、引き続き活動してまいります。
2019年9月
日本組織内司法書士協会 会長 司法書士 早川将和